養蜂家が出来ること 農園開拓記録
2020.05.25
vol.6 新たな開拓、はじまる。
皆さま、高橋養蜂のホームページをご覧いただきましてありがとうございます。
この「養蜂家が出来ること 農園開拓記録」のコーナーでは高橋養蜂が最も大切にする「ミツバチが快適に暮らせる環境づくり」をどのように進めているのか?そして、今、高橋養蜂のある伊豆下田の里山はどんな状況なのか?を紹介していきます。
年に数回、更新予定です。
是非、ご覧ください。
今回は農園に発生した悩ましい問題について書きます。
その問題とは...、農園にある木だけが増えすぎてしまったことです。
ある木とは「ナンキンハゼ」という中国原産の落葉樹です。
こちらです。
農園を借り受けた2017年ころは特にその木だけが目立って育っているという感じはありませんでした。
その翌年、2018年の春には農園をぐるりと囲う獣害対策の柵が完成。
するとすぐに柵の内側と外側で違いが現れてきました。
鹿に草を食べられてしまう柵の外は草木が育たない。
柵の内側は草木が元気。
その違いに驚くほどでした。
左側が柵の内側。右側が柵の外側。ここまでの違いが出るとは思っていなかったです。
でも、ある時、ふと気付きました。
柵の外でも中でもある特徴的な葉をした木が妙に元気なのを。
写真の柵の外側、巣箱の周辺に威勢よく育っている木があります。
同じ木が柵の内側でも威勢よく育っています。
調べてみると、「ナンキンハゼ」という木でした。
「あれ、この木、柵の外でもぐんぐん育ってる…?鹿が嫌いな木なんだな。こういう鹿が嫌いな木が美味しい蜜をたくさん出してくれたらミツバチにとってはいいのになあ...」
当初はそれくらいに軽く考えていました。
でも、昨年の春にはそんな軽く考えられないほどに、その木の勢いが凄いことになっていました。
柵の外側はこのように草が鹿に食べ尽くされてしまうのですがナンキンハゼだけが元気。どんどん増えていきます。
これはどう考えてもおかしいぞ...と、あらためて「ナンキンハゼ」のことを調べ始めました。
ナンキンハゼは、きれいに紅葉し、育てるのに手間がかからないということから一時期、よく街路樹や庭木として植えられた木だそうです。
でも、当初は庭木や街路樹として導入されたその「ナンキンハゼ」が、各地で異常繁殖する事態が発生しているとの情報もありました。
この勢いで増えたらこの農園も、そして、この周辺もナンキンハゼだらけになってしまいかもしれない。
外来種がたびたび問題になっていますが、身近にこうした事態が起きるとは思っていませんでした。
本格的に増えすぎる前に対策をしないとミツバチの楽園どころかナンキンハゼの楽園になってしまう!?そんな気すらします。
では、そうなる前にどうにしなければと、まずはツルハシとスコップで抜いてみました。
すると腰までもないような小さい木なら抜けなくはないのですが、それ以上の大きさになったものはとても歯が立ちません。
すごい根っこ!!まわりを掘って...、抜こうとしても抜けません…。
そうこうしているうちにもどんどん増えていきます。(本当にすごい勢いなのです!!)
これは人力ではどうにもならない...重機の力を頼るしかないかと、いつも農園づくりに協力してもらっている、米農家でもあり林業も営んでいる心強い仲間「アグリビジネスリーディング」の中村大軌さんに相談し、ユンボを出してもらうことになりました。
アグリビジネスリーディングのスタッフがユンボでナンキンハゼをどんどん引っこ抜いていく。
やはり人力とは違います。
この木から増えていったのか?というようなナンキンハゼの親分も見つけたので伐採。
こうして抜いたのは大小合わせて100本以上はあったかと思います。
伐採したナンキンハゼたち。これでも一部分です。
気付くとこんなに増えてしまう。
おそらくこの木の原産地では、この木を食す虫や動物などがいる、といった何かしらの理由でここまで異常繁殖はしないで他の動植物とバランスをたもっていたのでしょう。
ところが、海をこえてやってきたこの地では、そうした天敵がいないためか「異常繁殖」という事態が起こってしまう。
紅葉がきれいだから、栽培に手間がかからないから...といった理由で安易に土地になかった種をいれてしまう怖さを感じるとともに、生態系がいかに絶妙なバランスで成り立っているのか?あらためて感じる出来事となりました。
そして、こうしてユンボでナンキンハゼを抜いていくにしたがって、それまで手をつけることが出来なかった農地も自然と整地されていきました。
いつかはここも...と思っていてなかなか手をつけられないエリアがあったのです。
ナンキンハゼ退治のおかげで農園の整地が一挙に進みました。
整地が進んでいくと...ここにも蜜源になるレモンを植えれるではないか?という農地が現れました。
せっかくのなので、レモンを植えることを想定してユンボで整地してもらいました。
うっそうとして草刈もしにくい場所だったのですが...ご覧の通りです!
そんな不思議な展開であらたな農地開拓がはじまりました。
では、次回はこの農地の開拓について書きます。
長文、お付き合いいただきましてありがとうございました!
この開拓記録を書いている’20年5月中旬、農園に咲いたレモンの花にミツバチが蜜を集めに来ています。
少しずつですが「ミツバチの楽園」に近づいていっているようでとても嬉しいです。