養蜂家が出来ること 農園開拓記録

2020.11.03

vol.9 なぜレモンを育てる?持続可能な農業を考える。

高橋養蜂のレモン畑

皆さま、高橋養蜂のホームページをご覧いただきましてありがとうございます。

この「養蜂家が出来ること 農園開拓記録」のコーナーでは高橋養蜂が最も大切にする「ミツバチが快適に暮らせる環境づくり」をどのように進めているのか?そして、今、高橋養蜂のある伊豆下田の里山はどんな状況なのか?を紹介していきます。

前回、開拓中の農園で行ったレモンの苗を植える準備について書きました。

レモンを植えると決めてからコツコツと作業を重ねていってやっと、やっとここまで来た、という感じです。

棒が立っているトコにレモンを植える予定。土づくり終了!

さあ、いよいよレモンを植えます。
頼んでいたレモンの苗木が届きました。
土づくりをしてい土を再び掘り返し、苗木を設置して、そして、埋め戻します。

これをひたすら繰り返す…。
植え始めてから半月ほどで200本の苗木、全て植え終わりました。

昨年2019年末に土づくりを開始して、植え終わったのは今年2020年の3月。
ミツバチが活発に動き出す前に終わらせたいと思っていたので、なんとか間に合ってホッとしました。

あとは、しっかりと管理しながら育ってくれるのを見守るしかありません。

ところで…、
少し振り返ると、この農園はもともとは甘夏がたくさん育っていました。
地域の方が大切に育ててきた果樹園です。
でも、高齢になって管理が行き届かなくなると…、
獣たちに荒らされてしまい、多くの甘夏は枯れてしまったのです。

鹿が入り放題で果樹は樹皮を食べられて枯れてしまい、草も食べつくされてしまって育たない状態に。

ありがたくその農園を借り受けることが出来ました。
そして、ここをミツバチが安心して飛び回れる蜜源たっぷりの農園にしたいと考えはじめたのです。
借りはじめたのが2017年の夏。
まずは、枯れてしまった木を片付けて、そして、獣害対策の電気柵を設置しました。

山あり谷ありの農地を囲う柵を、仲間たちに助けてもらいながら設置。ひとりでは絶対に出来なかったです。

農園には様々な草木を植えていきたいのですが、メインとなるのは蜜源にもなり作物にもなるレモンと決めました。
もともと甘夏が植えてあった農地にレモンを植えます。

他にも蜜源となる草花を植えました。

そして、昨年末からは、はじめに手をつけれなかった箇所を整備して、レモンの植え込みをしていったのです。

で、今更なのですが、なんでレモンなのか?
についてしっかりと語っていなかった気がしてきました。

あらためて説明します。

今、全国的に農作物の鳥獣被害が深刻な問題となっています。
先の写真でわかるようにこの地でも本当に深刻な問題です。

鹿、猪、猿、カラスなどの鳥類。
つくってもつくっても作物を片っ端からとられてしまう。
そんな農地もあるようです。

設置した電気柵の外側は相変わらず鹿が草を食べ尽すので草が育ちません。対して、柵の内側は草がグングン育つ。
どれだけの食害があるのか?柵を設置してすぐにこの違いが出はじめて、あらためて被害の深刻さを感じました。

柵が完成してからは鹿と猪は防げるようになってきました。
でも、猿や鳥は柵では防げません。
狭い農地であれば、上方まで柵で囲うこともありますが、これだけ広いと現実的ではないです。

そして、もともと植えてあった甘夏は、猿やカラスも大好物。
わずかに残っていた甘夏も気付くと実がなくなってしまいます。
鹿が入ってこなくなれば、枯れてしまうということはないのですが(鹿は樹皮を食べるので木が枯れてしまうのです)、この農園でも、作物を出荷して収益をあげれるようにしていかなければ持続的にこの地で養蜂業を営むことは難しいです。

すっかり人に馴れたお猿さんは民家に入って仏壇のお供え物を失敬することもあるようです。
こう見るとかわいいのですが、そのヤンチャさは農業を営むものにとってはかわいくない…。

ところが、もともと数本植えてあったレモンはいつまでたっても猿もカラスも食べない。
人間にとってもそうですが、猿やカラスにとってもレモンの味はそのまま食べるには酸っぱすぎるのです。

そして、レモンは蜜源としてとても優秀で年に何回も花を咲かせてくれます。

さらには、レモンが育ちやすい条件としていわれる、
日当たりがよく、温暖で、風が強すぎないこと。
これらはこの農園にはピッタリです。
一般には伊豆は風が強いのですが、この農園は山に囲まれた地形ということもあり、他でビュンビュン風が吹いているときも、とても穏やかなのです。

そんなレモンの栽培の難しい点があります。
それは、病気になりやすいこと。

無農薬栽培がかなり難しいそうなのです。

養蜂場で育てる作物なので、無農薬で育てることは絶対条件。

それを知ってレモン栽培は難しいのか?と思ったこともありました。
でも、そんなレモンの弱点を克服した「璃の香(りのか)」という品種があると知ったのです。

しかも、その品種はレモンと伊豆を代表するみかんの品種、ニューサマーオレンジを交配して出来たものだということ。
ニューサマーオレンジはこの地を代表する農作物でもあることから、イメージ的にもピッタリです。
何より、ニューサマーオレンジを無農薬で育ててる農家さんはこの地にたくさんいます。
土地との相性もよさそうです。

この農園で育てるメインの品種は「璃の香」と決めました。(多様性を持った方がよいので、全てというわけではないです。)

ということで、今年の春、農園に「璃の香」の植え付けを終了してから、ミツバチ達が元気になるシーズンを迎えることが出来ました。

無事にすくすくと育ちますように。
そして、
たくさんの蜜を出してくれますように。

と祈りながら、しっかり管理していきます!

こちらは今年の5月の農園の様子。新緑がこれほど嬉しかったことはないかもしれません。

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