養蜂家が出来ること 農園開拓記録
2022.08.18
vol.18 鹿と共存共栄しながら養蜂場を管理する
この「養蜂家が出来ること 農園開拓記録」のコーナーでは高橋養蜂が最も大切にする「ミツバチが快適に暮らせる環境づくり」をどのように進めているのか?そして、今、高橋養蜂のある伊豆下田の里山はどんな状況なのか?を紹介していきます。
今回は、農業にとっては悩ましい存在といえる鹿との「共存共栄のあり方」についてです。
農園で果樹や野菜を育てるのに悩ましい存在ともいえる鹿。
樹皮を食べられると大きく育った木も枯れてしまいますし、やっと育った作物も鹿の手にかかればあっという間に食べ尽くされてしまいます。
とても可愛らしい鹿なのですが、その食欲や運動能力はあまり可愛らしくないのです。
伊豆では年々、鹿の農業被害が深刻になっています。
でも、養蜂の仕事をしていると、そんな鹿が「ありがたい存在」に変わることもあるのです。
その理由、おわかりになりますか…?
「いい養蜂家を見抜くには巣箱の入り口を見ろ」
養蜂家の間でよく言われる格言です。
巣箱のまわりが草でボサボサになると、様々な虫や湿気などでミツバチ達の健康に害をもたらすことから、そう言われるのです。
現在、高橋養蜂では5か所にわけて巣箱を置いて管理しています。
果樹園など獣害対策のための柵で囲っている中に巣箱が置いている拠点では、巣箱のまわりに鹿が侵入できない為、巣箱のまわりに草が凄い勢いで生えます。
なので、作業の合間をみて草刈をするのですが、夏に伸びる雑草の力はすさまじく1週間もするとボサボサになってしまいます。
夏の暑さの中、養蜂着を着ての草刈りは体力的にもハードです。
さらには、大きな音が嫌いなミツバチたちにとっては草刈りの音でストレスを与えることにもなってしまいます。
なので、草刈をするといっても少しずつに分けてやっています。
そのように、草の状況とミツバチの様子とのバランスを見ながら、夏の間、常に巣箱のまわりを草が育たないように管理するのはなかなか難しく、大変なことなのです。
刈り終わるころには刈りはじめたトコが伸びてきている…という状況に、キリがない…と途方にくれてしまうこともありますが、ミツバチたちの健康の為、コツコツとやっていくしかないと感じています。
ところが…、
こちらの写真の巣箱周辺、草管理がしっかり出来てる状況をご覧ください。
実はこちらは、獣害対策で囲った柵の外で管理している巣箱。
つまり、巣箱周辺を鹿がウロウロしているので、こちらが何もしなくても鹿たちが草を綺麗に食べつくしてくれるのです。
どれだけ鹿たちが草を食べるのか?よくわかるのではないでしょうか。
画面中央に電柵が設置されているこの写真を見ると、電柵の左側と右側で草木の育つ様子がまったく違うことがお分かりになるかと思います。
農園開拓を始めてから、獣害対策の点では大変な思いをしてきた鹿の存在ですが、養蜂の仕事では草刈りを毎日してもらい、とても助けられている側面があるのです。
山あり谷ありの地形での柵の設置は本当に大変でした。苦労のおかげもあって、農園を鹿や猪からまもってくれています。
そんな鹿は、巣箱にはまったく興味も恐れもないようです。
なのでこうして巣箱のまわりを綺麗に草刈りしてくれるのでしょう。
ちなみに、猪は、巣箱の下にミミズがいると、掘り返そうとして巣箱を倒してしまうコトがあったり、猿は巣箱を開けてみたりするので、養蜂家にとっても困った存在です。
鹿、猪、猿…どれもこの地域には本当にたくさんいて(人口より多いかも?)、それぞれ対策が変わってくるので本当に厄介です。
ちなみに高橋養蜂でつくった柵で猿は防げません。なので、猿が食べないレモンを育てることにした経緯もあります。
あと、ハチミツ好きといえば熊ですが、幸いなことに伊豆には熊がいないので、その点は安心です。(熊の多い地域で養蜂をやっている方、尊敬してしまいます!)
このように鹿や猪、猿が増えて里に降りてきてしまっているのは、木材や薪や炭を日常的に使っていた昔に比べ山々を手入れする人が少なくなり、木々がうっそうと茂り地面に日がはいらなくなった結果、山に餌が少なくなっているからともいわれています。
鹿もそうですが、猪も猿も近くで見るととても可愛い動物たちです。
こうして、鹿のお世話になって養蜂場を管理しているのですが、他の獣たちともうまく共存共栄するやり方がないのか?そんなことも考えながら養蜂場や農園を管理していきたいです。