養蜂家が出来ること 農園開拓記録
2022.01.08
vol.17「竹たのしみまくる下田」からはじまった循環の輪について
この「養蜂家が出来ること 農園開拓記録」のコーナーでは高橋養蜂が最も大切にする「ミツバチが快適に暮らせる環境づくり」をどのように進めているのか?そして、今、高橋養蜂のある伊豆下田の里山はどんな状況なのか?を紹介していきます。
今回は、高橋養蜂でもお世話になっている下田のイベント「竹たのしみまくる下田」からはじまった循環についての話です。
2017年からはじまった「竹たのしみまくる下田」は、放置竹林の竹でつくる竹灯籠で下田のまちを灯すイベントで、増え続ける地域の放置竹林問題の解決策としてはじまりました。
この竹灯籠がどのようにつくられているのか?というと、スタッフの皆さまが放置竹林に入り竹を伐採し、それを山からおろして作業場で灯籠の大きさにカットして、ひとつひとつ穴をあけて灯籠をつくっているとのこと。
そして、イベント会場に設置して、ひとつひとつ竹灯籠にあかりを灯しているそうです。
その竹灯籠が灯されるイベント期間中、下田のまちはとても賑わいます。
でも、これだけの竹灯籠をつくるのに、あかりを灯すどれだけの手間がかかるのか?考えると途方にくれてしまいます。
その苦労の甲斐もあってなのでしょうが、本当に素晴らしい空間となっていました。
でも、そんな竹灯籠ですが劣化が早いのが難点だそう。
一度つくったらずっと使えればよいのですが、そうもいかないとのこと。
イベントの度に新しい竹を伐り、また灯籠をつくらなければならないそうなのです。
なぜ放置竹林が増えてしまうのか?
昔はタケノコももっと食べられていたし、竹炭だったり、田んぼの稲架(はさ)だったり、土壁の下地の木舞だったりという竹を使う用途があり、増える前に伐られていました。
でも、今はその様な用途もほとんどなくなってしまった。
高橋養蜂の管理する山にも竹林があり、春にはタケノコが出てくると採って、頂いています。採りのがすとあっという間に背丈を超えるような高さになっていて、竹の成長の速さに驚かされます。
「竹たのしみまくる下田」がまちが賑わいをつくり、このイベントがあることで放置竹林が減る。
このまちにとって素晴らしい循環をもたらしていると感じます。
そして、劣化してしまいお役御免となった竹灯籠が昨年末に、イベントの実行委員会やボランティアの方たちによって、高橋養蜂の農園に運びこまれました。
高橋養蜂もこの「素晴らしい循環」の仲間にいれてもらえることになったのです。
とても光栄に感じます。
では、高橋養蜂で、このまちの賑わいつくりではお役御免となった竹がどのような循環をもたらすのか?といいますと…、
ふたつの場面の循環に登場してもらいました。
まずは、竹灯籠を粉砕して竹チップにして、土壌改良材として再利用。
竹に含まれる乳酸菌が土中の微生物を活性化し、農作物の成長促進、食味・糖度アップ、病気・害虫被害の減少等に効果があるといわれています。
イベントのスタッフの方々が農園まで竹灯籠を運びいれてくれました。ありがとうございます!
粉砕機でチップに。
こんなチップが…
こんなに出来ました。皆さま、ありがとうございます!
ブルーベリーやレモンの根元にまきました。
そして、もうひとつの場面がこちらです。
こちら、何をしているのか?といいますと…。
高橋養蜂では、蜂蜜つくりの副産物ともいえる「蜜蝋」(みつろう)でリップクリームや石鹸をつくっております。
蜜蝋は、採蜜の際に出る巣の破片を、グツグツと煮て溶かして、濾してつくるのです。
そのグツグツ煮る時の燃料として、養蜂場にやってきた使用済み竹灯籠を使わせていただきました。
竹は燃やすととても火力が強く、ガスだったらどれくらい時間がかかったのだろう?という蜜蝋づくりかとてもスムーズに、それでいて資源を有効活用し、環境にも優しく終えることができたのです。
放置竹林の竹が竹灯籠としてまちに賑わいをつくり、お役御免となった竹灯籠が農園の土壌改良材となり、蜜蝋をつくる燃料となる。
こうした循環の一部に高橋養蜂の農園が加われたこと、とても嬉しく思います。
竹灯籠をご提供いただいた「竹たのしみまくる下田」のスタッフの皆さま、この場を借りてお礼を申し上げます。
竹チップのお陰もあって、この夏、ブルーベリーがおいしく実りました。
そして、古くなった竹灯籠を燃料にしてつくった蜜蝋を原料とするリップクリームがこちらです。
これからもこうした循環を大切に、持続可能な農園をつくっていきたいと思います。